【読書感想】山内マリコ『一心同体だった』|少女から大人へ、10歳~40歳のリアル

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山内マリコさんの小説を初めて読みました。

アラフォーの私にとって「40歳の視点が入っている小説」と聞くと、自然と惹かれてしまいます。

山内マリコ『一心同体だった』は、1990年から2020年までを10歳~40歳という年齢で駆け抜けた、女性たちを描いた物語。

私はちょうどこの世代より少し後の生まれですが、「きっと共感できるに違いない」と思い手に取りました。

すると予想以上に面白く、ページをめくる手が止まらなかったんです。

今回は、特に1980年前後に生まれた世代が深く刺さるであろう小説『一心同体だった』をご紹介します。

目次

山内マリコ『一心同体だった』とは

著者・山内マリコについて

1980年生まれの作家・山内マリコさん。

庵野秀明さんに憧れて大阪芸術大学芸術学部映像学科へ進学し、映像表現を学びました。

卒業後は京都でライターとして働きましたが、25歳で退職して上京。

その後、『十六歳はセックスの齢』でR-18文学賞の読者賞を受賞し、注目を集めます。

2012年には、同作を収録した短編集『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。

この作品は2018年に橋本愛さん主演で映画化されています。

以降も、女性のリアルを描いた話題作を次々と発表している山内マリコさん。

今後の活躍にもますます目が離せません!

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作品の基本情報

集英社文庫から、2025年4月に発売されました。

(単行本は光文社より2022年5月に発売。)

文庫の解説は、社会学者の上野千鶴子さんが担当されています。

『一心同体だった』のあらすじ

『一心同体だった』は、平成30年史を背景に、1990年から2020年までを10歳から40歳という年齢で駆け抜けた女性たちを描いた連作短編集です。

小学校時代には、既にスクールカーストが存在し、「選ぶ側」と「選ばれる側」に分かれる女子の関係がありました。

中学時代には、異性の目を意識し始め、親友への憧れや嫉妬から傷つけあう日々。

高校時代は、プリクラやカラオケに夢中になり、「うちらが最強!」と信じていた友情のきらめきが描かれます。

やがて大学時代になると、「女であること」と「夢」の間で揺れ動き、思うように動けない現実に直面。

社会人になると、仕事・結婚・子育てに翻弄されながらも、それぞれの人生を模索していきます。

各年代ごとに主人公が入れ替わりながら進む物語は、まさに「同世代の女性たちの群像劇」。

読む人それぞれが、自分の過去や現在と重ね合わせられるような仕立てになっています。

『一心同体だった』の感想

作家ってすごいーー読後、真っ先にそう思いました。

自分自身の嫌な部分や、忘れたい気持ちまで思い出させられる。そんな小説です。

山内マリコさんの小説を読むのは初めてでしたが、女性たちの細やかな心の揺れを描く表現がとにかく巧み。

読み進めるうちに胸が締め付けられたり、思わず涙がにじみ出たり、感情移入しすぎてしまいました。

小学生時代のスクールカースト。

中学生時代に異性の目を意識して揺れる自意識。

高校生時代の「うちらが最強!」な友情のきらめき。

大学生時代になって「夢」と「プライド」の狭間で空回りする姿。

そして、社会人になってからの仕事・結婚・出産に翻弄される日々。

どのエピソードも「わかる、痛い…」と共感せずにはいられません。

さらにこの小説の面白い仕組みは、主人公が次々とバトンタッチしていくところ。

AさんとBさんの物語が終わると、BさんとCさんの物語へ…と繋がっていくため、「あの人のその後はどうなったんだろう」と気になって仕方がありませんでした。

しかも、随所に散りばめられた懐かしい言葉たち。

「岡田あーみん」「ソニプラ」「ミクシィ」「iPod」「タイガー&ドラゴン」「エビちゃん」…。

どれも懐かしくて、ページをめくるたびにちょっと嬉しくなりました。

結婚・出産、キャリアなど、それぞれの選択が多様になる世代に入ってくると、「何が正解なのか分からない」という迷いや、人と比べて落ち込む姿が描かれます。

そこにも深く共感してしまい、胸がぎゅっと痛くなりました。

普段は小説と一定距離を保って読み進められるんですが、今回は感情移入してしまい、ちょっと疲れました…でも、いい疲れです。この小説に出会えたこと、本当に良かった。

また50歳とかになって読んだら、気持ちが変わるのかな。

もう少し経ってから、もう1度読んでみたい本です。

まとめ

今回は、アラフォーの胸に深く刺さった小説『一心同体だった』についてご紹介しました。

久しぶりに小説との距離感が分からなくなった本。

出会えてよかったなぁと思うと共に、山内マリコさんの著書をもっと読みたくなりました。

皆さまの本選びの参考になれば幸いです。

  • 山内マリコ『一心同体だった』集英社文庫より発売中。
  • 1990年から2020年までを10歳~40歳という年齢で駆け抜けた、女性たちを描いた物語。
  • 女性あるあるが書かれており、胸が痛い、共感、嫌な思いがあふれ出すetc色んな思いになった。
  • AさんとBさんの物語が終わると、BさんとCさんの物語…といった感じで、面白い構成になっている。
  • 1980年生まれ前後には、懐かしい単語が沢山出てきた。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

↓アラフォー女性が出てくる小説↓

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